急性期病院というのがあったんだ

母が火傷で入院してから二週間を向かえようとしていた頃、主治医から退院を示唆された。皮膚移植などの手術を回避することにしたので、毎日患部を洗い薬剤を塗布することが主たる処置になったのと、ベッド中心の入院生活が認知症にも良くないだろうから、できるだけ元の生活に戻した方が良いだろうとのことだった。

認知症の件については医師の言う通りだろうと思う。確かにベッドでの生活が中心であるし、環境も家とはかなり違う。しかも母の場合、痒いか痛いか、あるいはどんな理由があるのかは解らないが、どうしても患部の包帯などを外してしまう。火傷の場合は患部が乾いてしまうのはとてもまずいことのようで、多くの時間、特にベッドに居る時は両手を抑制されている。本人に患部の包帯を外さないでと注意しても、言ったそばから忘れてしまうので、それも致し方が無いが、やはりストレスになるだろう。だからおそらく環境の馴れた自宅の方が安心するだろうとは思うし、我々の負担は増えるだろうが、多少なりとも目が届くかもしれない。

それにしても、今、病院にて施してもらっている処置を家で行うのは結構大変だと僕は思う。医師によれば十分できるとのことだが、実際のところ、現在でも手慣れた医師が一人と看護士が二人の計三人で処置をしている。それを僕、あるいは家族の者でやれとは・・・。もちろん通院でもやってもらえる。しかし前述したように、母の場合は目を離している内に外してしまうことも十分に考えられる。その度ごとに病院に行くことは実際無理な話だし、夜中に外すということも十分にあり得る。そうなると家族の者もその処置ができるようになっておく必要がある。

今入院中の病院は、この5年の間に何度か父も入院でお世話になった。でも過去に退院をせっつかれたことなんて皆無だった。何故、今回に限って退院を促しているのだろうか?しかも母だけでは無い。お隣の患者さんも、やはり退院を促されているらしい。お隣の方は高齢ではあるが病状は安定しているようで、目立った治療はしていないという理由もあるかもしれないが、お隣以外でも、そこかしこで退院を勧められているという話を耳にしている。

そこで医師や看護師に説明を受けるうちに、今回初めて【急性期病院】という単語を聞いた。今入院中の病院はまさにこの【急性期病院】というタイプの病院で、平たく言えば、発症後まもなかったり、症状が不安定な患者に対して専門的な治療を集中して行う病院であるらしい。ネットで拾った情報を組み合わせてみると、救急病院とか、大学病院などもそのタイプの病院らしい。まあ、厳密にはもっと専門的な規定が有り、そして病院がその旨申請するようだが・・・。

いずれにしてもその主旨から言って、安定をした患者さんは自宅治療とか、リハビリが必要ならその専門の病院等に、あるいは高齢者で、いきなり自宅治療が不安なら、療養型病院とかに転院を勧めるということらしい。ここでも【療養型病院】とか聞き慣れない言葉が出てきた。しかもその後も【亜急性期病院】とかいう病院もあるらしく、もはや僕の頭では何がなんだか解らない。この病院の種別は法律とか何かで決められているのだろうか?どうも、規定で看護士の人員数とかが定められているようなので、どうやら法律では無くても監督官庁の厚生労働省による行政指導はあるっぽい。

そうか、今母がお世話になっている病院は、所謂急患を受け入れることに特化しようということなのだろう。でもね、おもいっきり入院ベッドが空いているのだ。看護士さんに聞いたら、突然埋まることがあるんですと言っていたが、それにしても空きすぎではと思うほど空きが目立つ。

不思議だなあと思っていたら、これは別の病院の事務の方から聞いたのだが、どうやら医療報酬の受け取り方を変えたことが大きな原因のような気がする。それは母のお世話になっている病院がこの4月から医療費の定額支払い制度にシフトしたようなのだ。つまり従来の出来高制から患者がどの病気であったかによって医療報酬が決まる制度に移行した。この制度では、まず最初に診断結果に対する医療報酬が決められていて、実際に掛かった医療費は後から経費として差し引かれるのだそうだ。だとすると、母のように火傷という診断結果が出た時点で医療報酬が決定し、その後入院が長引き治療に要した医療費は経費として医療報酬から引かれる。つまり儲けが少なくなる。病院を経営する上では一大事なんだろう。

もちろんリンク先のウィキペディアにもある通り、一概に患者にとっても不利なことでは無いとは思う。がしかし、こういう事情を知らなかった僕にはとにかく面食らった。それに火傷を負った母が認知症を抱えているという事情からすれば、今後自宅に戻して家族のものが看護をするのか、あるいは【療養型病院】や【老人保健施設】で預かってくれて治療もしてくれるところを探すのか。その決断も迫られているし、何より施設を探すのなら受け入れ先を見つける必要もある。そういう観点からしても、退院を迫られるのは、どうしてもある種プレッシャーを感じずにはいられなかった。

でも幸い、病院側と話をして行くうちに、何が何でも期日までに出て行けというのでもないし、病院のケースワーカーさんも色々と当たってくれている。結局、施設や転院はやめて、介護ヘルパーさんの力も借りて自宅で何とか治療を続けようということにしたのだが、先日の後期高齢者医療制度と言い、医療制度や介護を取り巻く環境が、知らない間(自分が知らないだけかもしれないが)に刻一刻と変化して行っているというのを目の当たりにしている昨今である。

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