連チャンで村上春樹ネタです。昨日のエントリーをタイピングしながら閃いたんです。そう言えば、村上春樹さんの小説の主人公って共通の特徴があるなっと。
それは『とっても聞き上手』だってことです。とにかく相手の話を良く聞く。少なくともその姿勢だけは確実に持っている。
僕も今まで生きてきて、聞き上手な方達に遇ったことはあります。しかし、よく考えてみるとその方達は本当に貴重な方達なんですね。
そんな聞き上手な方達とお喋りをしていると、例えば少々愚痴っぽい話だったら気が晴れたように思うし、そして、どうゆうわけか一方的にこちらが話すばかりでなく、相手の話も聞かなきゃって気持ちになったりするんです。
気の置ける友人同士で口角泡を飛ばして議論するのも時には楽しいです。でも我ながら思うのですが、議論伯仲してくると相手の話なんか聞いてません。特に意見が違ってきた日にゃ、聞いてても、比重はどうしたら相手の矛盾を突いてやるかとか、次に自分が言うことを考えるのに傾いています。
そしてよくあるパターンは、相手の話の途中でこちらの意見を言い出します。こうなったらもう収拾がつきません。恥ずかしながら僕もよくあるんです。たとえば喫茶店なんかでお茶を飲みながら、気がついたら怒鳴ってるような大声を出していたり、やたらと鼻息荒くなってたり。
友人同士だったら笑い話で済むでしょう。それに気心が知れてるから、それを逆手に取って茶化して遊んだりね。もちろん僕が逆の立場になることだってあります。
そういうのも楽しいと言えば楽しいのですが、村上春樹さんの小説の主人公にはそんな人間が出てきません。あくまでクールで、そして時には真摯に相手の話に耳を傾けています。軽い冗談やウィットに富んだ会話をする場面でもそんな姿勢の人物像を思い浮かべるのです。
僕がそういう人物に憧れている?確かにそんな面はあるかもしれません。でも他人とのコミュニケーションって『相手の話に真摯に耳を傾ける』ことが何よりも大事なことなのではないかと思うのです。話の内容が深く傷ついたことや他人には言えないなあと思っていることだったら尚更です。
村上春樹さんが地下鉄サリン事件で被害に遭われた方達にインタビューをした『アンダーグラウンド』という書籍があります。その書籍を読んだ時、著者の村上春樹さんが被害者の方達の話しにいかに真摯に耳を傾けているか。お悔やみの言葉もあったのかもしれませんが、僕がとにかく印象に残ったのは、本当に真摯に耳を傾けようという村上春樹さんの姿勢でした。
そしてできれば思い出したくない被害の状況や、その後の心の変化を話そう、聞いてもらいたいという被害者の方達の姿もそこにはありました。100%ではないでしょう。被害に遭われた方達でインタビューそのものを断られた方達もいらっしゃったでしょう。
でも人間には心の傷を話すことで癒したい。たとえ同意ができなくともせめて共有してもらいたい、そういう気持ちがあるのではないでしょうか。いや、そこまで行かなくとも自分の思いを知ってもらいたい、聞いてもらいたいという欲求が強いのだと思います。
これはおそらく万国共通の想いではないかと、僕は思うのです。村上春樹さんの小説にはそういう人間の機微が至る所にちりばめられている。いや根底としてあるのかな。そして当然、僕もそうだよなって同意できるからこそ彼の小説にのめり込めるのかも知れません。
アンダーグラウンド村上 春樹
